川村妙慶先生から、お便りが届きました。
大変ご無沙汰しております。正福寺のご門徒の皆様、いかがお過ごしでしょうか?今年は、新型コロナウイルスの恐怖から私たちの生活が一変しました。「ソーシャルディスタンス」により学校や仕事での人と人との「距離感」はもちろん、大切な家族や友人たちとの「距離感」にさえ戸惑う日々が続きます。
同時に「この先、私は生きていけるのか?」と不安を抱える方もおられるでしょう。このコロナ禍で思うように希望通りの仕事ができない、やる気を持てないという方も増えています。
さて、就職後の定着率を俗に753といいますね。大卒は就職後3年続く人は7割、高卒は5割、中卒は3割だそうです。もちろん数字で決定付けられることでもありませんが、差別、偏見の目で自分に劣等感を感じ、やる気さえも持てなくなってしまうというのも、大きな理由ではないでしょうか?
● 仕事には5つの意味がある●
さて、仕事には「五つの意味」があると思っています。1つ目は、働く、奉仕活動をすることで、「出会いをいただく」ということです。自分にとって厳しい内容が与えられるかもしれませんが、そのことをこなすことで、「経験」をさせていただく。2つ目は、「社会に参加」することができます。職場の上司、同僚のみならず、取引先の人など、様々な人たちとのつながるの中で様々な仕事があることを知ります。3つめは、「学べる」。新たな経験をするということは知らないことばかりです。何一つ無駄なことではありません。謙虚に学ぶことで人生は豊かになるのです。4つ目は、仕事を通じて知り合った人との間に「信頼関係」を築くことができます。仕事をするということは責任を引き受けることです。それは信頼にもつながるし、家族との関係も深まるでしょう。
そして最後に、仕事が「自信」につながります。自信をつけて他者に認めてもらうのではなく、日々、積み重ねた仕事が結果、自信につながるのです。
● 嫌な人とも付き合わないといけない●
とはいっても、職場に良い人ばかりではありませんね。嫌いな人もいます。そんなときどうしたらいいのでしょうか。
お釈迦様は、人間には「怨憎会苦(おんぞうえく)嫌な人とも会わなければならない苦しみ」があるとお教えくださいました。
まさにこの世は「一切皆苦」「思い通りにはならないのですよ」と説かれています。
私の友人は、顔をあわせるだけでもイライラしてしまう上司がいたそうです。理由は、友人の顔を見る度に嫌みしか言わないというのです。何とか仕返しをしようとある日、上司に「美味しいスープを入れたので飲まれませんか?」と手渡しました。実はそのスープの中に、日ごろのうっぷんを晴らす意味で一滴の洗剤を入れてかき混ぜたというのです。
上司はスープを飲みながら「クリーミーに泡立ってる。美味しい!」と呑みながら突然に涙をこぼされました。「ごめんね。私のことを許してほしい。
あなたが羨ましくて、つい当たっていたの。こんなに美味しいスープをいれてくれるあなたに心からお礼を言うわ。これからもよろしくね」とおっしゃったそうです。
友人はどきっときて、「何ということをしたのだろう」と心から反省をしたそうです。その夜、「とんでもないことをした」と私の元へメールがきました。
私は「今までは、私を否定する人は『嫌な人』となっていたけど、上司がお礼をいったことで、あなたにとって『善い人』に変わったのね。嫌いになる原因はいつも向こう側にあると勝手に決めつけていたかもしれないけど、自分が嫌いという壁を作っていたのかもね。」と伝えたものです。
円融至徳の嘉号は(えんゆうしとくのかごうは)
悪を転じて徳を成す 親鸞聖人
「円融至徳の嘉号」とは「南無阿弥陀仏」ということです。これから生きるん中で嫌な人は決して無くなりません。しかし日々生きる中で、目の前の人と出会うことで、いよいよ「嫌い」が転じられて、すべての出来事は、私を生かす大きな肥やしになると思えるのです。それが南無阿弥陀仏の生き方なのですね。どうかすべてを受け入れる中に、慶びがうまれるのでしょう。共にお念仏をいただきましょう。
事に仕えると書いて「仕事」。世間が私に何をしてくれているか?ではなく、あなたが世の中に対し、どう仕えるのか、私にできることを精進していきましょう。この不安な時代だからこそ、あなたにしかできない事があるのではないでしょうか
川村妙慶 拝 2020年11月
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